Friday midnight blue 2

 


Friday  midnight blue 2

 



Ristorante Blu mezzanotte


(青い夜、ねぇ…)


「ヴォナセーラ」

地味目の雰囲気だがテキパキ動くウェイターが程よい声で出迎えた。


小さなレストランだ。7,8人は入ればいっぱいだろう。

店は奥行きのある作りで手前はカウンターというお一人様来店にも入りやすい作りだ。

奥のテーブル席に初老の夫婦が一組。それ以外に客はいない。

おや?ハズレ?とも思ったが引き返せる訳もなく、カウンターに腰掛けた。


「お客様、テーブル席も空いておりますがこちらでよろしいですか?」

「あ、うーん、いや、ここがいいや。なんかキッチンも覗けるし」

「かしこまりました」


カウンターの向こう側に銅製の手なべをゆらす黒髪の男の後ろ姿。

メニューをながめつつその背中をぼんやりと見つめると

ふいにぱっと振り返って盛りつけ台に置かれた小皿を手にした。


(おぉー男前なシェフ)


「お飲物は」

「あっそうだね、えーえと」

ちょっと間があくほど見てしまっていたらしい。あわててビールビールと思うが

(ん?ここはイタリアンだからワインか。むむ、でもなんか冷たいのグビッていきたいぞ、

やはり店のチョイス間違えたか)なんて思いながらメニューを眺めていたら

カウンターの内側から声をかけられた。


「スプリューゲンというイタリアビールはいかがですか?

ドライな飲み口で仕事帰りの一杯にはちょうどいいですよ」


黒髪のシェフだ。


「あ、本当?じゃ一杯目はそれで。そうなんだよ、ちょっと一杯目グビッとやりたくてサ。

すみませんね、ワインもおいしそうな店なのに」


「いえ。お仕事帰りの方はビールの方が多いですよ。山崎、グラスは奥の冷蔵庫の中からな」


ちょっとびっくりした。けれど料理人ってそういうものなのだろう。

客の飲みたい物ぐらい顔見たら容易にわかるのかな。や、俺がわかりやすいのか。



進めてくれたイタリアビールはまさに望んでいた味で

入店直後からの不安な気分を一掃してくれた。

やっぱ仕事帰りにはビールだよぉぉ!

頼んだアンティパストも組み合わせが絶妙でビールに良く合う。


これは良い店発見したー。


うまい酒とうまい料理はテンションがあがる。


気分良く、金曜の夜は更けて行く。

 

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