Friday midnight blue 3
すっかり遅くなってしまった。
あのババア、サービス残業させやがって
やさぐれた気持は空腹に正比例する。
とりあえず、飯だ飯。
すっかり行きつけになっていたRistorante Blu mezzanotteのドアを開ける。
「あ!旦那!…お疲れ様です…これはまたずいぶんとお疲れなようで」
あれ?いつもの「ヴォナセーラ!」がないと思いつつ…
「もー本当、疲れてんの。とりあえず、スプリューゲンとチーズの盛り合わせ」
「…」
「何?」
「わりーな、今日はもう閉店なんだよ」
厨房から黒髪が顔を出す。
土方がタイをゆるめながら声をかける。
おいおーい客に対する言葉遣いですかそれは。
本当こいつが厨房にこもりっきりなのはこの店の存続のための得策だよ。
本来客商売向いてねーよ。
なーんて思うが自分もそれ相応の態度で接しているのだ。
一度鍵を忘れたかなにかで店の入り口で山崎の到着を待つ土方と遭遇したことがある。
持ち前の人懐っこさからいろいろ冷やかしたら思いのほかムキになり軽い言い争いになったり
それ以来客がいないときは土方をいじっては楽しんでいた。
「そういうわけなんです、旦那、すみません」
「えぇーひどいよジミー!俺はひと駅歩いてまで食べに来たってのに」
「てめ、何時だと思ってんだ」
11:31
「すみません旦那、もうラストオーダーも過ぎたし材料切れも多くて…ってジミーって俺のこと!?」
ひどく疲れがどっと出た。
俺の胃袋はもう食べるものを消化するための胃液が用意されてんだ。
この胃液の行き場はっ?どこにいけばいいの?
胃液で胃液は消化できねっんだよ!
疲労の色濃くなった顔を見てさすがに同情したのだろう
「土方さん、ここでなんか出しとかないとあとあと恨まれそうで怖いですよ、俺。
食べ物の恨みは深いって言うし…」
「っち。しゃーねーな。俺たちこれから飯なんだよ。まかないでよけりゃ用意できるぜ」
「おぉ!!そうこなくっちゃぁ!」
入口のライトが消され奥のみにライトを残したテーブルで3人の宴会が始まった。
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