Friday midnight blue 1
予定のない金曜日ほどむなしい物はない。
持ち前の要領の良さで残業もなく仕事を切り上げたのは良いが。
渋谷か新宿で飯でも食って地元でDVDでも借りて酒飲みながら見るか。
あれっなんかやだな。金曜の渋谷なんてガキどもばかりでうるさいだけだ。
やめやめ。
でもとりあえず目の前の地下鉄の入り口に素直に入って行くのは気が向かないので
散歩〜ということで1駅か2駅歩く事にした。都心の1、2駅なんてたいした距離はない
金時はとりあえずイヤホンから流れる音楽に合わせ軽快に歩き始めた。
テールランプに彩られた4車線道路は嫌いではない。
方向感覚は良い方なので定期圏内の駅を目指してだいたいの道を歩く。
大使館の前を横切る。4つ角にはすべて警察官が立ちテロ対策なんかに精を出している。
こういう、まじめに公務中の方々の横をラフな格好で通り過ぎるのは好きだ。
別にやましい事をしている訳ではないのに気にしてもらいたいような変な感覚。
予定のない金曜日にわずかな優越感をもたらしてくれる。
ちいせぇなぁ とも思うけど、いいじゃないか。
お登勢の事務所が仕事内容の割にお堅い地域にあり
同じように駅に向かい歩く家路を急ぐ周りの人々は皆スーツにネクタイ姿だ。
この地域から浮いた自分の姿は割と気に入っている。
徐々に浮上してくる気分と共に都心を歩く。
近道かなと思って入った路地はこの辺には珍しく小さな飲食店が軒を連ねる細い通りだった。
雑多な感じはなく1軒1軒こじんまりして入り口のしつらえも具合のいい店ばかりだ。
ぎゅうっぅ
となった腹の具合を考慮し、そうだわざわざうるさい繁華街で飯食う事もねぇなぁ、と
木目調の重そうな扉の店目が止まり、吸い寄せられるように
足を踏み入れた。
Ristorante Blu mezzanotte
(青い夜、ねぇ…)
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