SAIHATE HOTEL

 

 

 

SAIHATE HOTEL

 

 

 

タバコ銜え 電話睨み 男は送る 秘密のメッセージ


窓をたたく雨粒を睨み送信ボタンを押す


「2次会をホテルの部屋借り切ってやってるんだ

 仕事終わったら来いよ どんちゃん騒ぎしよーぜ」


というのは嘘で。


部屋には己一人。大きなベットの端っこに腰掛け

分厚いガラスの向こう 送信後のメッセージを眺めた


これって詐欺?


いやいや、そもそも待ちぼうけの可能性あるからね、これ。


都内の古い老舗ホテルは高層ホテルではないが高台にあり

部屋からは雨にぬれた都心の建物や首都高のテールランプが

赤く揺れる。


急に落ち着かなくなって部屋を出てフカフカの廊下へ出てみる。

エレベーターホールは吹き抜けになっていて

賑やかなロビーが見下ろせる。


金曜日の夜だ。

夜からの披露宴パーティーやら祝賀会やら外国人観光客やらでロビーには人があふれている。

ボーイが入り口から客の荷物を次々と運び込む。


其の中に


思わず目を見張った。


上からでもしっかりわかる黒ずくめの男。

かっちり着込まれたスーツ。

ああ、来てしまった。嬉しい気持ち半分、罠にかけてしまった罪悪感半分。

でもこの独特の 人をだます、驚かす楽しさ

自分がつくづくドSだと実感する。


ロビーの人ごみを かき分け 進む 君は 勇敢な兵士(ソルジャー)


本当、褒めてあげたいくらい


早足で部屋に戻り 

ものの数分の、永遠とも思える待機をするのだ。

 

 

 

 

 

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グレー部分:稲/葉浩志 SAIHATE HOTELより引用。

憧憬がうかぶ歌詞はいいですね。ちょっと面白い楽曲なので未聴の方はぜひ。

 

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