蒸し暑い夜にまかせて冷えたビールがよく進んだ。
一気に500mlのジョッキとか飲めちゃうんだからなぁ。
気持ちいいぐらい喉になだれ込む。
そしてそんなことを続けて数時間後
うぇっ
あーきぼちわるい…これあれだわ…完全に二日酔いコースだわ…
いや、一日分の酒で?二日分?酔えるわけだからコストパフォーマンスたっけぇなぁおい
いやでもまてよ…二日酔いの二日目の酔いってほとんど頭痛しかなくね?
というかまだ夜は明けてないからね、さっき飲んだばっかりだから!
あー
そう言いながらゲップ混じりにフラフラと歩きながら家路に向かう。
今日は大丈夫だ、うん、今俺一人だしね。
K点越えとかないから。うん。気持ち悪いって認識があるだけりっぱだよぅ?
しっかしなぁあれはひどかったな…
俺が記憶無くしたのをいいことにみんなで俺のこと騙すなんて。
ひでぇーよなぁありゃ。弱 「り」 者いじめもいーとこだよ。
そもそもあのシナリオ書いたやつは誰なんだ?
あっやべぇな頭痛ぇ。しかし飲んだその日から二日酔いになるなんて俺もけっこう若いな!
あれ?すぐに体調に出て若いって言われるのは筋肉痛のことか…
支離滅裂な思考回路と足もとのおぼつかなさが正比例する。
早くふとんにたどり着きたい一心で家々の間の路地、おおよそ通り道とはいえない路地を
近道と思い込んで歩く。ころがったバケツや瓶などを蹴飛ばしながら
家の壁に手を付きのそのそと進む。路地を抜けきる半分ぐらいのところまで来た時に
どこから出て来たのか灰色の猫が足もとをくぐり駆け抜けていった。
通り過ぎて7秒ほど過ぎた後生温かい気配が背後からした。
ゆっくりと振り返ると7秒前に通り過ぎた猫が化けたかのようにそこに人影があった。
後を追ってくるような足音はしていない。酔っ払ってはいたけれど
さすがにこんな所で後を追われてたらさすがに気が付く。
降って湧いたような人影に冷や汗が流れた。
いや、これはあれだから、ほら、早めにきた二日酔い?の?あれ?
その人影が声を発した。
「おい、お前まだ懲りずに飲み歩いてんのか」
聞き覚えのある低い、馴染みのある声だ。こりゃ知り合いだな脅かしやがって。
目が慣れた暗闇に現れたのは猫…ではなく忍び装束に身を包んだ
服部全蔵だった。
「なんだ、化け猫かと思ったぜ、脅かすなよ」
「化け猫かぁそりゃどーも。良いほめ言葉だ」
同時にK点越えの失態がいろいろ思い出される。
そうだ…この男が一枚噛んでいるのだ。おかげで酷い目にあったのだ。
酒の胸やけのムカムカがそのまま感情になったように
ちょっとつっかかりたくなってきた。ちょうどあの時の事を思い出していたからなおさらだ。
懲りた、といいつつまた再びこういう失態状態を晒しているのにもなぜか腹が立つ。
「あのビデオなら複製してうちにあるんだぜ…坂田の銀時さんよぉ」
明らかに嘲笑混じりの声色を浴びせられる。
ちっくしょう…結構こいつには借りがある。
ここでちょっとした仕返しでもしてやんよ。
うつろな目を向けたまま胸元をつかんで息をとめた。
じわじわ頭に血が上ってくる
そのまま「うっ」っといって膝をガクンと折り
地面に音をたててひざまずいた。
まだ息は止めている。脈が早くなるか…
「お、おい!」
予想通り服部がちょっと慌てたような声を出し身を乗り出す。
そのまま胸元を握りしめたまま顔面から地面に倒れ込んだ。
多少頬を擦ったがこれくらいやればリアリティあんだろ
「おいっ!大丈夫かよっ!っち!!」
咄嗟に手首を掴まれ脈を測られる。咄嗟の対応としては的確だな。
息を止めていたのと体調不良で多少早くなっていただろう。
頬をペチペチと叩かれる。目はすべてつぶってしまうとわざとらしい
半目でぼーっとするように…
そうすると次は目の下を引っ張られ下まぶたの裏を確認される。
慌てているのだろうが応急処置的動作に無駄がない。
頬は擦りむいたけれども寝っ転がったら演技といえど起き上るのが
おっくうになってきた。
近づいてきた所をいきなり起き上ってアッパーでもくらわそうと思ったのだが。
ぼーっと考える。
(そう言えばこいつ地雷亜に俺がやられて海に落ちた時、
こいつが吉原まで運んだんだよなぁ)
その時もこんな風に応急処置したのだろうか。
あの時はマジで命に関わる状態だったはずだ。
おまけに俺は海の中に落ちた。そこから引き上げたはずだ。
冷たい地面に頬をつけていたら本気でそのまま気を失って眠ってしまいそうだ。
「ちょっとお前本当いい加減にしろよ…っくしょう面倒くせぇなぁ」
そう言いながら腕を強く引っ張られた。自分の体が地面からふわりと引きはがされる。
あっという間に地面と視界が離れて気が付くと服部の肩が目の前にあった。
「そこで吐いたらマジで捨てて帰るぞ」
そうぶつくさつぶやいているのが背中の振動で伝わる。
そうか…俺おんぶされたか。
まぁ楽ちんだからいいや、こいつ万事屋の場所知ってるもんなぁ
しかしまぁ思いのほか軽々と持ち上げられたもんだ。
なんか忍術でも使ってんのか?俺の方が少しはでかいはずだし
そもそも大の大人の男を背負うってこんなに簡単かよ。
ん?待てよこのまま背負われて届けられたらまた借りができるだけだ
ちがうちがう、俺はこいつにちょっとした仕返しがしたかっただけだ。
目の前に耳がある。
フゥーっと息を吹きかけると同時に首に回した腕に力をぐっと込めた。
丁寧に背負われていた状態から両手をぱっと手放される。その行動に予測はついたのでトンと地面に両足を着地。
腕は首に巻き付けたまま、背後からはがいじめ状態だ。
持ち前のドS心に火が付く。この嗜好はもう…
「おい…」
そのまま耳の裏側、軟骨で形とられた緩やかな淵を
舌の先を尖らせてゆっくりと舐る。ピクリと肩が震えた。
「…っ…!!」
「あれ?感じちゃった?」
耳元で息を潜めて低く呟いた。そして再び同じ位置を同じ様に舐る。
淵の内側3mmの所の短い産毛を舌のざらつきで皮膚へ撫で付けて行く。
舌の上でじわっと塩分を感じた。
「やめっ…このっ酔っ払いが…お前は飲んで帰ってきたんだろうが俺は一仕事終えて帰りてぇんだよ。
人の善意につけ込んでお前…」
「はいはい」
巻き付けた腕を解こうとする。
あ、だめだ抵抗されると抑えつけたくなる。
背後から抑えたまま建物の壁に押さえつける。
右腕を解き着物の合わせ目から差し入れる。 汗ばんだ肌を感じながら徐々に下半身へ。
何度か肩を外そうと抵抗された。その都度体全体で押さえつける。
舌先を耳から首筋へ移し、右腕が確かな体の中心を掴む頃には抵抗は殆どなくなっていた。
苦しげに耐える呼吸が聞こえる。
楽しくなってきた。
しかしなぜか視線を感じる。ちらりと目をやると。
先ほどすり抜けたはずの灰色の猫がジッとこちらを見ている。
(見たけりゃ見てろよそこで…覗かれんのは嫌いじゃねぇな…)
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全蔵と銀さんは夜道で会わせたくなる。(2011,6,18)
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