Holiday

 

 

 

 

音の神様が降臨なさらず気がつけば3日。

 

ホテルの一室で缶詰といってもさすがに3日となると部屋が荒れてくる。

ヘッドホンからは低音のベースのリズムだけ拾う様になった。

メロディでなくリズムだ。

こうやって特定の音を拾う様になってくるといよいとまずいな、というのは

自分で把握している。

 

納得がいかないのと時間がないのが正比例して悪循環をおこして

いらいらして歯を食いしばったままいたら

肩がひどく凝った。

 

寝ていないのでベットの上だけが三日前と同じだ。

恨めしそうに白いシーツを眺める。

 

 

 

静かなはずのホテルの通路側から何やら騒がしい音が聞こえてくる。

先ほど頼んだルームサービスが…そろそろという時間だが

 

嫌な予感が、する。

 

ガチャガチャガチャガチャ

ガラガラガラ

 

おおよそボーイの足音でもない。

加速するワゴンの音が自室の前で急停車した。

 

コンコン

「失礼します、ご注文のルームサービスをお届けに参りました」

ドアスコープから外を確認すると余裕のない表情のボーイを確認。

どうやら本当にルームサービスは来たらしい。

無言でドアノブに手をかける。一瞬ためらったががちゃりと捻ってドアを開けた。

ボーイと目が合ってホッとする寸前に足下にしゃがみこんでいる人影を確認した。

秒速でドアを閉めようとする所にしっかりと体を挟みこんで部屋の中へ滑り込んで来た、

もじゃもじゃ頭の男、坂本だ。

 

 

「申し訳ございません…お客様、ご来客の方のご連絡をと思ったのですがこのお方がどうしても直接と…」

 

「こーんばんは万ザイ君」 

 

「ボーイにまで銃を当てるなんて…大人げないでござる」

 

「ちょっとしたアメリカンジョークじゃき…ほぅ…

ほんなら万歳君は大人の対応で速やかに部屋に入れてくれてはくれないろうか?」

 

ご苦労だった、とボーイにチップを弾み食事のワゴンは自分で運び込みすぐに立ち去らせた。

ワゴンと共にニヤニヤ顔の坂本ももれなく付いてくる。

 

オーダーした炭酸水を一口飲んだだけで

だいぶ満足してしまった。軽食はもう食べたくない。

こんな状態がずっと続いている上に食欲を減退させる人物がいればなおさらだ。

 

部屋に入って来た坂本はよくしゃべる。

 

「ほぉ~思いのほか荒れてるのぉ…ちゃんと食事しちゅうか?そげな水ばかり飲んどると

はかどる仕事もはかどらんぜよ」

 

「坂本殿が現れたお陰で食欲が失せたでござる」

 

「おおぅ…わしのせいで胸がいっぱいか!そいつは感激ぜよぉぉ!」

 

「どうしてそう…捉えることができるでござるか…」

 

あははははーと気の抜けた笑いをしながら坂本はベットの上にあぐらをかいた。

そして一口、と言わんばかりに万斉の飲んだ炭酸水のペットボトルを強要した。

しぶしぶ手渡すとラベルをしげしげと眺めながら一口飲む。

さして興味なさそうに蓋をぎゅっと捻ってベットのサイドボードへ置いた。

 

はぁと息をついて再び話し始めたが、言うことはいつも唐突だ。

 

 

「万斉君って自慰するのかぇ?」

 

「何をいきなり…坂本殿は好きそうでござるな」

 

「アッハハハハハーバレておるな。洋物のAVなんかなかなかよかよ!無修正のがあるがいるかぇ?って万斉くんはこげなことして

ふつーのAVで抜けんのか?よかったらゲイ用のもあるぜよ。」

 

「今すぐその股間のブツを叩き切ってご覧に入れる。まな板に乗せろ」

 

「あっはははは!恐ろしいのぅ!!そうじゃぁこの前見たのが前髪が長めの…あの忍者そっくりなゲイ俳優がおってな、

おんしも知ってるろあの忍者。いんやぁ…なかなかそっくりぜよ!」

 

「御主は知人に似た人間でも抜けるのか」

 

「ああ、ぜんぜん構わないぜよぉ!そうじゃな、万斉君似の俳優いたら買い占めちょるな」

 

「不謹慎なことを申すな」

 

「しっかしのお、一人遊びも大概にしないと空しくてかなわん……だからこうして夜這いにきた。」

 

「いますぐ帰れ。色町にでもよって病気でもうつされればいいでござる」

 

「またまたぁ…そんなつれないこといわんと!おんし…寝てないじゃろう…どうじゃわしと一発…」

 

「なんで寝ていないからといって御主と同衾せねばならぬ」

 

「いやいや科学的根拠というかおんしにも経験あるじゃろう…オーガスム達すると一気に眠くなるろ…わしに手伝いさせてつかぁさい!」

 

「断るっ」

 

というか早いか飛びかかりながらベットへ抱え飛び込もうとする赤いマントの男をよけきれず

ぼすり!と着地した。

 

「離せぇぇぇ!!」

 

「そんな怖がらんと…な…乱暴にはせん…いうてもちょっと気持ちよくなるくらいじゃき…」

 

着地時に身をかわしたつもりだが赤マントの男は背後からしっかり手を回し抱きついていた。

ヘッドホンを軽く持ち上げ、その少しの隙間にわざとらしく切ない様な声色で息を吹きかける。

 

「…っ…」

 

「なぁ…万ザイくん…わしゃぁおんしの顔色の悪さが心配でたまらん」

 

「坂本殿が立ち去れば元の顔色にもどりますよ」

 

「かわいくないのぅ…人が心配してるのに…」

 

「…喉が渇いた。そこの水をとってくれ」

 

と坂本の頭上にあるペットボトルの水を指差した

素直に手渡される。寝転がったままだがなんとか蓋を開け口端からこぼしながらも口に含む。

ぐるりと坂本側へ寝返って

口に含んだ水をブッーっと坂本めがけて吹き出した。

 

「わっーーーーー!!!!」

 

「いい加減に離すでござる坂本殿」

 

「万斉く~ん…ちょっーっとお痛がすぎるぜよ…」

 

濡れたサングラスを外した坂本の顔が…

今までにない目つきをしていた。

ほおを伝って垂れて来た滴を舌でぺろりと舐める。

 

一瞬で背筋に緊張が走る。

 

背後から回された腕が急に力を帯びる。

がさがさと素早い動きで背中の素肌に手が侵入してくる。

抜け出そうにも足をしっかり回されて抜け出せない。

もとより徹夜続きでそんな体力が無い。

横になったら負けだ、と、しばらくベットでは寝ていないのだ。

久々に横になった体は重くベットに沈み込み言うことを聞かない。

 

もがく様子をよそに今度は坂本が炭酸水を口に含んでいる。

同じ様に吹きかけられると覚悟したが、ゆっくりと顔面が上からのしかかって

静かに唇を重ねられた。

と同時に流し込まれるぬるい炭酸水。

 

ぐっっ…ぅぐえっ…えっ

 

いきなり仰向けで無理矢理水を飲まされたらどうなるか…

 

案の定、炭酸水は素直に喉に流れこまず気管に流れ込み激しく咽せる。

逆流した炭酸水は容赦なく気道を塞ぎ鼻につんとした刺激を与える。

しばらく咳き込みむせ返る

 

「おぅおぅ…万斉君だいじょうぶかぇ…?」

 

自分でしかけたくせに心底心配するような声色で背中をとんとんとさすりながら問いかける相手に殺意を覚える。

サングラスの奥から目一杯相手を睨むが咽せて滲んだ涙でよく見えない。

ゆっくりとサングラスを外され瞳を覗きこむ、満足そうな表情に、怒りが込み上げてくる。

 

再び唇を重ねられて咥内の水分を回収するようにずっ…ずっ…っと音を立てて吸われた。

 

その間も瞳を閉じずに睨み続けてみた。

 

「そうカッカせんと…いーま気持ちよくさせてやるきに」

 

そういいながらまた背後に回り、後ろから抱きかかえられる様な体勢になった。

そしてズボンのファスナーを素早く下ろし右手をぐっと沈めた。

 

「…!何をする…やめっろっ…!」

「何をするって…ナニじゃろ…」

 

言葉の制止など聞く訳もなく

沈められた右手に体の中心にある熱を掴まれた。

ゆっくりと上下に動かされる。

確認するようにさすられ、時にてっぺんを親指が撫で滑る。

 

その動きにあわせて手に掴まれた熱の質量が徐々に増し、

立派な固まりとなっていく様子が自分にもわかり

羞恥心を半分残したまま思考回路がぐにゃりと曲がった。

 

…ッハァ…ハァ…ハァ…

 

鼻で呼吸することをとうに忘れ口から息が漏れる。

背後からゴクリ、と唾を飲み込む喉を下す音が聞こえた気がして更に興奮が募る。

 

はじめは抵抗のつもりで動く右手を制止するように手首を掴んでいたが

今はまるで一緒に動かしている様な、助長する様に添えているような様子になった。

 

背後からゆっくり囁かれる

「万斉君その手どかしてくれんと気持ちよくなれないぜよ…しかしまぁ…こちらから眺めてると

万斉君が自分でしてるみたいでのぅ…えらい興奮する…そうか万斉君はそうやって…」

囁かれながら握る力が強まり動きは加速する。

 

くちゃっ…くちゃっ…

 

熱の固まりは自らが溢れさせた水分を滴らせて今にもはじけそうだ。

 

「あぁっ…っあぁっぅ…はぁっ…はぁっ…」

 

「ほう…珍しいのぅ…声を殺さぬほど気持ちええが?わしが貫いてる時もそういう声出してくれんかの…」

 

「…はっ…アっ…気持ち…ょ…く…ない…」

 

「まだ抵抗するかこの糞ガキは…おんしのふぐりまで涎たらしちょるのに…はじけるのも時間の問題ぜよ…

ほんとは銜えてやってもいいんじゃが…しばらく遊んでない様子じゃしのぉ!銜えた瞬間にはじけそうじゃな、あははっははっは」

 

思考は完全にいかれた。

握られぐちゅぐちゅといじくられている手の感触を

(あぁ、手のひらより意外に指が長いな)とか、(思いのほか骨張っていて乾燥ぎみだ)などと

情報を拾って来ては自分で興奮してしまっている。

 

もう…だめだ。

 

ベースの音ばかり拾って聞くのと同じ様に特定の箇所の情報ばかり強く感じてしまうともう、だめだ

 

(…拙者は…なんてことをされながら…)

 

「万斉君…えぇ表情じゃのぅ…」

 

 

(あっぁぁ……)

 

 

 

 

「…いやらしいのぅ」

 

 

 

 

 

その言葉を同時に目の前が真っ白になった。

筆舌につくしがたい快楽の波に飲まれ落ちてゆく感覚。

 

深く、深く、意識の底をさらわれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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\(^o^)/一つ目のG話から時間を遡りました。土曜深夜のフルボッキエネルギーでなんとか完了でございます。ありがとうございました!

お粗末様でございました。実際の所万斉は自慰するんですかね?なんていうか映像見てするっていうより

自分の妄想と音だけでオーガズム達しちゃいそうですね、自給自足できそな感じ。

いいですね、中二っぽい。自分の作曲した音で自慰。

ちなみに坂本の会話の全蔵似のゲイビデオ俳優は実際にサンプル画像見させてもらって吹き出したことあります。

洋物だったけど。テラ全蔵。三次元すごい(2010,12,27)


 

 

 

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