Room 3
(あー…今回の護衛の仕事…延長は無しで)
あの若造の兄ちゃんも相当いい体格をしていた。鍛えられたでかさだ。
自分が細身なせいか迫力負けすんだ、ああいう兄ちゃんに会うと。
まぁ自分には自分の仕事と体型は合っている。
というか合わせているからいいのだ。
ゴンゴンとドアを強めにノックし、返事もそこそこに分厚い社長室のドアを開ける。
「あの兄さん付けてかなくて平気っすか?なーんか胡散臭いですけども。」
「あ?あははははーおんし客に向かってなんちゅーことを。
お客様は神様やきね、多少の胡散臭さは飲み込む覚悟がなきゃぁでっかい商売はできん。」
ドア枠に寄りかかり腕を組みなおして様子を見る。
「途中物音がしましたからね、踏み込もうかと思ったのですが商談邪魔するのも何なんでね。
仮にも脅迫状が届いてるのに商談には同席させないとは、よっぽどやばいヤマうごかしてるのかなぁと思って。
あ、いやいや、これは失礼契約違反ですな。」
「あー…踏み込んでくりゃぁよかったきに。わしゃぁ殺されそうになっっちょった!」
「はっ!声の一言でも発すればすぐ飛びこみましたよ。これで任務失敗とみなされちゃぁワリにあいませんぜ」
「いやぁ、声も出せない状況でな、必死に抵抗したんじゃ、条件飲まなけりゃコロスって雰囲気じゃったぞぉ!
ありゃあの客から脅迫状送られたのかもしれん…ほらっここんところに引っかき傷がっ!」
「良く言うぜ。」
あ、敬語を忘れた。
「あんた、護衛なんていらねぇほほど強いだろ」
今までのヘラヘラした表情が一瞬消える。その代わりににやりと口端が上がり
サングラスを外す。眼光には鋭い光。
頭を掻くしぐさはやめないままもじゃもじゃの頭をなでまわしている。
(ああ、こいつこそ胡散臭い)
「自分の身を自分で守るのはもちろんだがのぉ、商売に集中したいんじゃ、適材適所ちゅーもんがあるろ」
「じゃぁドア蹴り破って商談室押し入ったらよかったナァ…服部全蔵一生の不覚。
客を押し倒す社長さんが助けられなかった…あ、間違えた逆だ、客に押し倒されるシャチョウサンか、こりゃ失礼」
相手の表情が無表情になる。
「ともかく不要なら延長は無しで今日で護衛の任務を解かせて頂く。私的な面倒事はごめんだ」
「おんしの察知力なめておった。こちらから目は見えんのにのう…」
ゆっくりと近づいてくる。
身長は…ちょっと見上げるくらい。やはりこいつ、さっきの兄ちゃんの首絞めたな。
手首の引っかき傷は抵抗されたんだろう。
その手がすっと上がってきて 目的地が額だと察知した。
目を明かすつもりだろう。
そこを素早く手首をつかんで相手の動きを止める。
さっきは不覚にもあの若造にキスされたが今度はそうはいかねぇ。
つかんだ手首は力を抜かずにぐぐぐっと抵抗する。
「ほぉ…細いとは思っちょったが握力はすごいのう…いだだだだだっ!ちょ、たんまたんま
あー、わしが悪かった!」
そのままつかんだ手首を引き寄せてバランスをくずす前のめりに転んだ。
四つん這いになった坂本を見降ろす。
顔を上げヘラヘラと笑って見せている。その顔の位置に目線を同じにすべく
しゃがみ込んだ。
耳元に顔を近づけゆっくりと低い声を出す。
「あんた風に言うなら なめたらいかんぜよ だ。」
その一言に思わずごくりと喉を鳴らした坂本が一言。
「おんし…いい声じゃなぁ。鳥肌もんぜよ…もうちくっと働いてくれたら給料はずむっちゅーのはどうかの?」
また手を延ばされそうになったところをひらりとかわし、部屋を出る。
「あー、給料なんですがね、あの陸奥という女性に前払いで頂いてるので、
もうこれ以上いると損になるんで、ここいらで失礼させていただきますわ」
「な…」
「では失礼するぜ」
陸奥…!!なんっちゅう…余計なことを!
その場に取り残された坂本は四つん這いのまま拳を床にたたきつけた。
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ちょっと不二子ちゃん的全蔵。全蔵はぎんちゃんと同い年妄想内設定があるので万斉を兄ちゃん呼ばわりするのも一緒。
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