「ばあさん、いつもの」
といって小窓の入り口に小銭を置く。
小さなガラスを開けて見えたのはいつものばばあではなく
やけに青白い手をした男だった。
「いつものってどれでしょう?」
「ああ、わりぃ、そう、それの赤。っていつものばあさん、どした?」
釣り銭を渡す手が一度ぴくりと動いた。
「なんか具合悪いとかで入院したとさ」
おう、そうか、御大事にな、と世間話もそこそこ、タバコを受け取り店から離れた。
公園のベンチに腰掛け、一服、といこう。今日は天気もいいしな
店から少し離れた公園で、適当なベンチに腰掛ける。
セロファンをむき始めた時に後ろの茂みが
ガサガサガサ!!
と動き 動物か?と思って振り返ると
いつぞやの深夜に遭遇した忍装束の男が。相変わらず目は見えない。
「あ」
「あ、じゃねぇよ、お前あん時のジャンプ野郎なんでこんなとこから出てくんだ」
「いやぁまぁなんかなんとなく探し物の依頼…みたいな」
髪についた葉を払いながら土方の隣に腰かけた。
「おいおい、万事屋でも始めたのか?そんなもんは一軒で十分だぜ」
「あ、副長さんも知ってんのあの銀髪天パの自由人」
「あぁ、知ってるも何も忌々しい野郎だぜ。自由人っておま、茂みからでてくるオメーも十分自由だろ」
「そーゆー、副長さんも組織の中にいるわりにゃぁのびのびしてらっしゃる」
「そうだな自分で選んだ道だからな、窮屈には感じねぇだろうよ」
「違いねぇ、俺もだ」
笑いながら手を止めていたセロファンを剥き終え、タバコを一本取り出した。
銜えた後に、内ポケットのライターを捜す。
全蔵はその様子をまじまじと眺めていた。
やがてライターが見つかりボッと火が点り銜えたタバコに近づけられる。
「あっ!」
「うぉっ」
というか早いか全蔵が火のついたライターを素手で叩き落とした。
「熱っっ!」
「…てめぇ…何しやがる…」
タバコを銜えたまま土方がニヤリと顔を上げた。
「ちょっ、そのタバコ貸せ!」
すっと土方の口元からタバコを抜き取り、叩いたライターを拾い上げ火を付ける。
軽く吸ってフゥーっとそばでいた野良犬に吹きかけた。
その途端、犬は狂ったように咽せだしその場をのたうち回ってぐったりしてしまった。
「あっぶねぇ、この前言った事現実になったぜ、おまえさんタバコに細工されてるぞ」
「へぇ、命拾いしたわ。ってお前も少し吸ったじゃねーか」
「伊達に忍びじゃねぇんでな、耐性がある。肺に入れなきゃ大丈夫だ。」
「ほぉ。優秀なこった。んじゃまぁ、世話になったな」
そういって静かにベンチから立ち上がった土方の腕を全蔵が掴む
「ちょっとぉぉ。命の恩人になんの謝礼もないなんてちょっとあれなんじゃない?
なんなら買った店まで戻って助太刀だってかまわねぇぜ」とニヤリと笑った。
土方かは全蔵の手を軽く振り払い振り向き様に言った。
「喫煙者なめんなよ、いつもと香りが違う事ぐらい銜える瞬間に気づくわ。」
と言ってまだ中身の入ったタバコをぽろりと足下に落とした。
「おまっ、わかってて吸おうとしたのか!」
「ははっ、俺はてっきりお前ぇが細工したのかとおもったぜ。
止める様子がなかったら俺はお前を叩き切ってた。
俺が吸うのを止めたって事はおめぇは毒盛った奴らとグルじゃんぇってことがわかった。上出来だな」
次の瞬間、くしゃ!と踵でタバコを踏みつけ
そのままスタスタと公園から去っていった。
(あ〜あ、おっかねぇ。鬼の副長とは言ったもんだぜ)
潰されたタバコの箱を拾い上げ、ポケットにしまい込み、
どこか安全な場所で処理してやるか、と全蔵は思った。
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無駄に長くなってしまった!!
土方も全蔵も多少の劇物に耐性があると萌えます。薬とか
2010,4,11
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